内閣委員会議事録(道交法改正の参考人質疑〜参考人の意見陳述を終えての質疑)

平成
19613日


○ 河本委員長  次に、市村浩一郎君。

○ 市村委員  民主党、市村でございます。

  本日は、お三人の参考人の皆様には貴重な時間を賜りまして、心から御礼を申し上げます。十五分と限られた時間でございますが、早速質疑に入らせていただきます。

  まず、井上参考人の方にお聞きしたいと思います。

  井上参考人、先ほどお話にもありましたように、本当に御夫妻、貴重なとうとい幼い命を失われたということ、心からお悔やみを申し上げます。それで、しかしながら、その後、御夫妻の本当に懸命な活動によりまして危険運転致死傷罪ができ、道路交通法も改正され、そして確実に交通事故の死者は減っているということであります。お二人のとうとい幼い命のおかげで多くの命が救われている、私はこういうことだというふうに思っております。本当に心から御夫妻の活動に感謝と敬意の気持ちを表するものであります。

  特に、御主人さんも事故で大けが、大やけどを負ったということで、皮膚の五〇%を事故そして手術で、発汗機能を失ったりという状況の中で活動を続けていらっしゃること、本当に私なんかまだお二人の活動のごく一端しか知らないわけでありますけれども、本当にありがたいというふうに思っております。本当にありがとうございます。

  そして、今、いよいよ、お二人だけじゃありません、もっと多くのまた犠牲者の方、また御遺族の方、そうした皆さんのお気持ちが一つの結実となって今回の道路交通法改正もあると私は認識しております。そもそも、先ほどおっしゃったように、飲んで車に乗ったこと自体が私も故意と考えるべきではないかというふうに思うわけでありますが、この点に関して、井上参考人の方からお考えをお聞かせいただきたいと思います。

○ 井上参考人  私も、最初のみずからの事故の刑事裁判の時に、どうして過失犯としかとらえられないのかというふうなことを、何とか検察を説得しようと、控訴してもらおうというふうに思ったりしているときに、いろいろと知人を通じて、アメリカの例あるいはイギリスの例などを調べていただいたりしました。そうしましたら、やはり諸外国では、日本のような、道路交通法、刑法という二つの法律の体系そのものが非常に珍しい法で、飲酒運転による事故というのは、もうアクシデントという言葉は使っていない。私も間違えて、アメリカの方に対して、私の娘たちは飲酒運転の事故によって亡くなりましたと言ったら、今アクシデントという言葉を使いましたかというふうに聞かれたんですね。何というふうに言っているんですかと言ったら、飲酒運転による事故というのは、事故とは、うちの国では、アメリカでは言っていません、これは犯罪、クライムという言葉を使っていますというふうに、明らかにその言葉遣いからして、もう違う。

  ですから、飲酒事故と言うと皆さん違和感を示されるというほど、言葉の使い方からして、また法律でのあり方、殺人罪、殺人罪にも幾つかの種類があるようですが、殺人という言葉が明確に使われるような、その法律名からして違うというふうな意味では、私たち、どうしても、飲酒あるいは本当に危険な運転によって人を死傷させているのにもかかわらず、今回、刑法も改正されましたが、なぜ法律の名前に過失という言葉が残ってしまうのだろうか。自動車運転をして悪質な例については七年まで科せられるようにしましたというふうに法務省は説明されましたが、それでも、どうして自動車運転致死傷罪ではなくて自動車運転過失致死傷罪というふうにその言葉が残ってしまうのだろうかというふうなことに対して、とても抵抗を持っております。

  実際に、交通事故というのは、本当に、過失と故意の差というのは極めて境界があいまい。私たちも川口の事件を、初公判を傍聴したりしましたが、警察や検察、あるいは法務省は、裁判では確かにあれはわき見運転というふうに処されてしまうかもしれません。でも、半年間で百回も、もはやほとんど毎日のようにわき見運転。しかも、一秒、二秒、わき見運転をしているというのではなくて、そのまま、高速度のまま百メートルも走るというような運転をいつもいつもやっている。そして、あの川口での事故を起こす三カ月前には、同じようにウォークマンの操作をしていて追突事故を起こしてしまった。そんな常習的にわき見運転をしている事犯に対しても過失という名前の法律しかつけられないのか、使えないのかという意味では、御遺族でなくても、私たちが聞いていても、これは過失犯とは言えない。この前科、この運転癖、本当に危険な運転をしている被告に対して、法律はどうしてわき見イコール過失という言葉をつけてしまうのかというふうに思ったぐらいですから、飲酒運転になったら、これがどうしてすべて危険運転という言葉を使えないのかというところでは、まだまだこの国の法律、法律家の方々に頭を柔軟にしていただいて、諸外国の例あるいはその考え方、あるいは運用の面で柔軟な運用というふうなことも視野に入れて検討していただきたいなというふうに思います。

○ 市村委員  ありがとうございます。

  この間、私は、やはり、逃げ得ということがあるという認識で、これまで、三年近く、いろいろと警察庁の皆さんとも議論してまいりました。最初のころは、警察庁の方も、逃げ得は実は少ないというような話だったと私は思います。ところが、今、井上参考人が先ほどおっしゃっていただいたように、この三年間の間、また、いろいろな大事故も起きた中で、やはり逃げ得はあるんじゃないかということが、だんだん認識が高まってきたんじゃないかというふうに思っております。

  これは必ずしも専門ではないかもしれませんが、せっかくですから、お三人の参考人に、今回の法律改正で逃げ得は全く解消するとは言えないと思いますが、かなり改善されるのか、それともやはり足りないのか、この点についての御見解をお伺いしたいと思います。お三人、一人ずつお願いします。

○ 長江参考人  おっしゃるとおり、私は、逃げ得が許されるようなものは非常にまずいと思っています。

  それで、実は、今回の法律改正のときにいろいろ伺ったんですが、法律を扱っておられる方には法律のあり方というのがまたある。だけれども、私は、実はエンジニアなものですから、少しずつ改善をするということが結果的にいいところへつながっていくんじゃないのか。したがって、法律を扱う、法律を業としておられる方にはそういう意見があるけれども、周りではそうでない意見もある。それをどういうふうな形で埋めていくかというようなことは、もう少し時間がかかるのかなと。

  しかし、基本的に、先ほどもお話がありましたが、今回のことでもちょっと逃げ得になる可能性はありますけれども、一番大事なことは、やはり、逃げてはいけないんだということを運転者教育の中できちっと言っておくということも必要だろうと思いますし、それによって大変罰が重くなるんだというようなことをやっていけば、今回の法律改正で、私は、少なくとも、従来のような逃げ得がふえるとは思いません。むしろ減るのではないだろうかな、こんなような気がいたします。

○ 井上参考人  私たちも、この三年近く活動をしている中で、この逃げ得という言葉が報道されればされるほど、ああ、そうか、そういう手があったんだというふうに気がついてしまう加害者予備軍という人たちが、ブラウン管を通じて、おお、そうか、そうか、お酒をさらに後から飲めばいいんだ、あるいは、助手席に二リットルのペットボトルを常に置いておいて、もし飲酒運転で警察に捕まったら、その場でがぶがぶ飲めばいいんだ、そういった手口を知らしめてしまうのではないか。これが報道されてほしい、私たちの訴えが世の中に知れ渡ってほしい、だけれども、それがかえって加害者をふやすことにもならないか、そういったジレンマを常に感じながらやってきました。

  ただ、あるところから、少し開き直った感がいたしております。それは、やはり、この人たちというのは、どんなに法律を厳しくしても、これからはもう、ひき逃げをしたら、五年ではなくて十年という刑が最高刑で科されるようになります。さらに、業過ではなくなって、自動車運転過失致死傷罪の七年までありますので、ひき逃げをした場合には懲役十五年まであるのです。ただ、逃げなくて直ちに救護したより、比べて、七年と十五年、どっちを選びますかというふうに、そういった明快な法律の位置づけ、意味合いを一般の人にわかりやすいように知らしめてくだされば、この法律の改正の効果というのは目に見えて出てくるのではないかと思っています。

  ただ、私たちが問題にしているのは、どうしても悪質な人たち、非常に法律の裏知識といいますか、穴を見つけることが本当に早い人たちというのは、どんなに厳しくしても、やはり抜け穴、さらなる悪質な手口を見つけ出してしまうだろう。それは時間の問題かもしれないと思ってもいます。新たな課題が出てきたら、やはり、三年、四年といった通常の法改正の更新期間というものを待たずして、直ちにそれを国会の方でもまた取り上げていただきたいと思っております。

○ 池田参考人  僕は専門ではございませんが、ただ、改正案を見せていただく限り、明らかに逃げ得に関しても一歩踏み込んだ法案だと思っています。ただ、井上さんも言われたように、これは基本的にわかりやすい形で啓発を徹底しておかなければ、先ほども認知症のところで申し上げましたように、前回の改正案もほとんどの国民、対象となる高齢者が知らないというような事実がありましたので、ぜひとも交通教育の部分で国民に周知徹底をしていただきたいと思います。

○ 市村委員  啓発の大切さ、本当に同感でございます。

  もう時間も限られていますので、池田参考人に最後にお聞きしたいのは、さっき池田参考人の中で、結局、地域による意識差があるということで、大変それは重要だと思うけれども、自分に降りかかると、都会の方は、四〇%はちょっと難しいな、これが地方に行くと八〇%だと。そのときに、池田参考人の方から、やはり車がないと地域社会が崩壊する可能性もあるというような話もされたんですが、私は、ちょっとあえてお聞きしたいんですが、むしろ、車がなくても地域社会が崩壊しないような地域社会づくりというのも私はあるんだ、このように思っているんです。もともと車はなかったんです、みんなに。それでも地域社会は大変幸せな地域社会を築けていたかもしれないわけですね。だから、これから二十一世紀の社会というのは、むしろ、そういう地域社会というのもまた模索し、方向性として見出していくべきだというふうに僕は思っておりまして、そこについて池田参考人の御意見をお聞きしたいと思います。

○ 池田参考人  全く先生と同感でございます。実際に、地域によっては、既に、認知症に限らず、一般の高齢者で免許を返納された方に対して、さまざまな、タクシーの補助券を出すとか、商店街の割引を出すとか、公共のバスを半額以下にするとか、取り組みを始めている地域があります。そういう地域の場合には、返納率もとても高いんですね。ですから、ぜひとも先生方にイニシアチブをとっていただいて、地域社会できちんと高齢者が住めるような仕組みをつくっていただきたい。

  認知症だけではなくて、御存じのように、これからどんどんまだ高齢化が進みます。ですから、高齢のドライバーはどんどんこれからもふえると予想されていますので、その方たちが、認知症に限らず、身体的な要因等々でどこかで運転を中止せざるを得ません。これはもう明らかなことですので、その後、安心して地元で住める仕組みというのを、今からぜひとも積極的につくっていただきたいと思います。

○ 市村委員  では、あと一分半あります。最後に、井上参考人、実はさっき、埼玉の事件の例を挙げていただきました。あれは、飲んでもいない、スピード違反も起こしていない、ひき逃げもしていないということで、業務上過失致死罪ということで五年となったわけであります。こういった事例についても、やはりこれから私たちは、本当にこれが過失なのか故意なのかということは、おっしゃったようにしっかり考えていかなくちゃいけないと思いますが、それについての御見解を最後にお聞きして、私の質問を終わらせていただきます。

○ 井上参考人  私たちは、法務省、警察庁、検察の方々だけではなくて、裁判所にもっと足を運んでいただきたいなというふうに思っているのです。机上では、過失犯というふうなことで、うっかり見落としだとかわき見だとか、ブレーキとアクセルをちょっと間違えちゃったというふうなことが典型的な例として挙げられますが、やはり裁判を聞いていきますと、この人は起こすべくして事故を起こしている、いずれこういう事故が起きる運命にあったというようなドライバーが少なくありません。

  そういう意味では、過失だ故意だ、そういうふうなことで、故意犯は重く、過失犯は悪気がなかったんだから、そんなに厳しい上限を設けるわけにはいかない、そういった法律家の方々の御意見ももっともなんだと思うのですが、それを変えてくださいというわけではなくて、交通事故に限っては、裁判所に行って傍聴をもっともっとしていただくと、現場の方々の感じているフラストレーション、こんなに悪質なドライバーなのに業務上過失致死傷罪という罪名でしか裁くことができないというふうないら立ち、物足りなさというものを感じ取ることができるのではないかなというふうに思います。

  以上です。

○ 市村委員  以上で終わります。ありがとうございました。