永田町発 NPO最前線…A
 
「非営利」って何?
 
●法案審査入りはいつになるか

 

 すでに昨年 11月に国会にNPO法案を提出している新進党に対し、連立与党3党がいつ法案を国会に提出するのかに注目が集まっています。
  NPO法は日本に新しい経済セクターを創造しようというものです。こうした社会システムの根幹にかかわる制度づくりで、与野党ともに議員提出法案が用意され、国会の場で堂々と論議が繰り広げられることが期待されています。これは当然のことのようで、実は画期的なことです。「立法府である国会はこれまで一体何をしてきたのか」と、憤りにもならない空しさを覚えますが、何事もまずは第一歩。これを良い手本として、国会議員諸氏が本来の仕事であるべき立法活動に真剣に取り組むようになってほしいと、有権者そして納税者の一人として強く望むものです。

  さて、審議入りはいつになるか。予算関連の政府提出法案の提出期限が 3月8日とされており、連立与党はそれまでには成案を得て、衆議院に提出をすべく作業を急いでいるようです。これは、3月中に平成8年度予算とともに成立を目指しているものと思われます。NPO法に解決が求められている政策課題を達成する法案であれば、早期に成立することは願うところです。ただ、住専問題の影で、ほとんど法案が審議もされないまま、与党案が数を頼みとして、人知れず成立をしてしまわないように、フェアプレイを期待しています。
  ところで、今日一般に NPO(非営利組織)法案と呼ばれるものは、そのような名称をもった法案が一本あるわけではありません。それは、NPOに法人格を付与する手続き等を定める法案であったり、税制上の優遇措置を規定するための、所得税法や法人税法等の一部改正案からなる一群の法律案を総称しています。ちなみに、法人格付与に関して、新進党の法案の正式名称は「市民公益活動を行う団体に対する法人格の付与等に関する法律」といった長ったらしいものです。
   

「非営利」の定義
 

 さて、 NPOを支援する制度づくりを考える時、まずどうしても「非営利」の定義を理解し、それに親しむ必要があると考えます。
  「非営利」には明確な定義があるのであって、これを無視して、 NPOと推測される一部の組織の活動の実態からNPOを捉えようとすると、「NPOはボランティア団体である」といったような誤解が生じます。事実、昨年のNPO法に関連する新聞紙上等の報道を見ると、必ずと言ってよいほどに、NPO法はボランティア促進法というような紹介をされていたのです。
  確かに非営利活動にとって、ボランタリー(自主的)な意志は重要な要素ではあります。また、一般的にボランティア活動がそう思われているように、無償活動ということも非営利活動には大切な要素です。しかし、だからといって、非営利活動は無償活動そのものではありません。もしそうだとすると、助成財団のように職員全員が有給である組織が NPOであることを説明できません。さらに、映画のエキストラは無償であることが多いにもかかわらず、映画製作会社は必ずしもNPOではありません。
  また、非営利という言葉の響きからか、非営利組織は利益を得る事業を行ってはいけないという解釈も少なからず見受けられます。
  非営利の定義を一義的に言えば、簡単に「純利益を利害関係者で分配しないこと」(非分配原則)です。したがって、この非分配原則さえ守られていれば、非営利組織 1)においても、その組織目的からして節度を保った収益事業は行えることになります。
   

非営利団体と法人格
    非営利の定義に従えば、非営利団体2)は身近に数多く見受けられるものであることがわかります。たとえば、同好会や各種クラブ、さらには大学のサークルも非営利団体と言えます。同好会の中には、趣味が高じて仲間で製作したものを販売したりして収益をあげている例もあるでしょう。ただ、そうした場合でも、収益から費用を差し引いてもプラスとなり純利益が出たとしたら、それは仲間内で分配するのではなく、また好きなことのために使うはずです。
  このように、収益を主たる目的とせず、場合によっては収益をあげる事業を行い、それでたとえ純利益がでたとしても、団体を構成するもので分配することなく、もっぱらその団体の目的に再利用するような団体は、非営利団体なのです。
 
現在、非営利団体の圧倒的大多数は、法人格をもたず、任意団体(人格なき社団)として活動をしています。法人格を得れば、代表者の個人名ではなく、団体名で賃貸や電話等の契約を結ぶことができます。これは代表者個人の負担を軽減するだけではありません。契約者が個人の場合、もしその契約者が死亡したら、団体としてはすべての契約をやり直す必要があるのです。この点、法人は私たち自然人のように亡くなることはないため、宗教法人オウム真理教のように強制的に解散させられたりしない限りは、永続性が保証されています。
 
民間非営利公益法人ともう一つの公共

 

  仲間内で楽しむ同好会を含めて、非営利団体であればどんな団体でも、簡単に法人格を取得できるようにすべきだということでは決してありません。今日そして 21世紀の社会に必要とされ、かつ私たちが支援をしていかなければならないのは非営利団体の中でも、教育や社会福祉の充実、文芸振興、環境保全、人権擁護、まちづくり、国際貢献などを目的として、明確に公益意識3)を持ち、非営利組織としての経営の在り方を確立して、アカウンタビリティ4)をもったものです。こうした非営利公益組織には当然なこととして簡易に法人格を取得する道が開かれるべきです。むしろ重視されるべきは、税制上の優遇措置です。くわしくは本連載次回以降に譲るとして、ここでは非営利組織が、組織を存続させその公益目的を果たしていけるよう、しっかりとした財政基盤を持てるような制度をつくっていく必要があることを指摘しておきます。
  また、こうした非営利でかつ公益を目的とする法人は民間に分類されるものです。民間において公益活動を行う、政府からは独立した「もうひとつの公益」と言えるでしょう。
 

 

1)、2)     多くの場合、この二つの用語は同様に使用されていますが、私は明確に区別しています。単に人の集まりを考える場合には「団体」を、それに加えて、機構や経営を意識する場合は「組織」を使用しています。

3)     「公」には、二つの意味があるようです。公園や公衆電話の「公」および公的資金や公立の「公」です。ここでの「公」は前者で、英語で「 public」という単語がもつニュアンスを伝えるものです。

4)  「説明できる」ということです。すべてを明らかに説明できる、または公開しても恥ずかしくない組織にしようとする努力の中に、既に公益性が潜んでいると言えないでしょうか。

(いちむら・こういちろう/新進党政策審議会)

『経済セミナー』 1996年4月号 p.56-57 連載A

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