2004年6月12日 週間現代

改悪ドウライバー必読
道路交通法改正で「路上駐車」 ヤバイぞ!

道路交通法の“改悪”が近づいているのをご存知だろうか。現在、衆議院で審議中の道路交通法改正案は、 6 月上旬に成立すると見られている。改悪案の最大のポイントは路上駐車の取締りを民間法人に委託しようとしている点にある。これが実現すると、全国 7500 万人のドライバーにとって限りなく迷惑な事態となるのだ。

民聞法人が取り締まりに参入すると、どうなるのか。
国会で道交法改正の問題点を追及している民主党の市村浩一郎代議士が解説する。
「取り締まりを委託する民間法人には NPO( 非営利団体 ) と株式会社、具体的には警備会社が想定されています。そもそも、株式会社は利益をあげるのが目的です。そんなところに取り締まりを任せたら、成績を上げるために手段を選ばなくなる。現状の警察による取り締まりにさえ『ノルマ主義』という批判があるのに、これ以上理不尽な取締りが増えればドライバーの不満は爆発しますよ」

しかし、そんな批判をよそに警察当局は民間への委託推進に意欲満々だ。 4 月 8 日の参院内閣委員会では、人見信男警察庁交通局長がこの件に触れて、
「今と同じ取り締まりでは良好な駐車秩序は確立されない。現状 ( 年間約 170 万件 ) の 2 倍程度の駐車違反取り締まりを行いたい」 と発言している。つまり、現状の 2 倍の取り締まり数をノルマと定め、その達成のために民間の「活力」を導入しようという腹づもりなのだ。
たしかに、悪質な路上駐車は公共の利益に反する違法行為だ。違法駐車に起因する渋滞によって発生する経済損失は、年間 12 兆円にも上るという試算もある。
しかし現実問題として、都心部ですべての車が駐車場に停められるはずもない。自動車評論家の松下宏氏も、道路行政の不備を指摘する。

「警察庁は『以前よりも駐車場の数は増えた。整備は進んでいるのに悪質ドライバーが路上に停めるから、いつも空きがある』と主張しますが、これは詭弁です。都内では、本当に必要な商業エリアに駐車場を造らず、不便なところばかりに駐車場が増えている。それでは誰も使いませんよ。渋滞解消を言うのならば、通行料を徴収して都心部への車の流入を減らすロードプライシング制の導入や基幹道路の整備など、取り締まりの民間委託よりもほかにやるべきことは、いくらでもあるはずです」

5 分停めただけで違反

改正法案によると、委託業者は競争入札 . によって決定される。取締員は警察の監督下で地域を巡回し、デジタルカメラなどを使って駐車違反の事実を確認。証拠は警察に提出され、違反かそうでないかの最終的な判断は警察が行う。違反だと判断された場合、違反者への通告や違反金の徴収などの作業も、委託を受けた民間法人が手がける。
警察の手下になった連中がちょこまかと動き回り、デジカメを片手に手当たり次第に路上駐車中の車を撮影する。
重箱の隅をつつくような取り締まりでノノルマ達成にしのぎを削る。そんな光景が浮かんでくる。

こうなると、わずか 5 分あまりの路上駐車でも違反に問われかねない、社会の現実を無視した取り締まりが横行するのは必至だ。
道路交通法では、荷物の積み降ろしや客待ちなどで 5 分以上停止した場合や、運転手が車を離れて直ちに運転できない状態を「駐車」と定めている。駐車禁止区域で車から離れたり 5 分以上停止したりした場合は即、駐車違反の対象となってしまうのだ。
もちろん、こんな法律を杓子定規に適用されてはドライバーはたまったものではない。取引先に荷物を届ける、ちょっとコンビニに立ち寄るなど、日常のありふれた行動も駐車違反、なんてことになりかねず、車の大きさに応じて 1 万 5000 〜 3 万 5000 円の違反金が科せられる。
これはもう、ドライバーいじめと言うほかない。
 
成立すれば国民の猛反発は避けられない新・道路交通法だが、警察が " 改悪 " を強行するのには理由がある。警察問題に詳しいジャーナリストの寺澤有氏は、こう指摘する。
「改正案では民間法人として NPO も想定していますが、この中に警察最大の天下り団体である『全日本交通安全協会』が含まれる。つまり、取り締まりに関する個人情報を保護するには警察のノウハウが有効だという名目で介入し、自分たちの天下り先を確保しようという魂胆がミエミエです」
民間企業と同様、警察でも団塊世代が定年期を迎えようとしている。警察官は全国に約 25 万人いるが、o年以降、毎年 1 万人が定年退職する見込みだ。しかも、それだけの規模の退職者が 10 年以上続くことがわかっている。
これだけの人員の再就職先があるはずもない。取締りを受託した法人が彼らの受け皿となるわけだ。

警察 OB がその任にあたるのには、もう一つ理由がある。
「長年にわたって警察に勤めた者は、多くの機密情報を握っている。そうした機密を外部にもらさず、警察への忠誠心を維持させるには、なるべく当局の目の届くところに留めておきたいという本音もある」 ( 警察庁幹部 )
こうしたことを考えると、
取り締まりの民間委託とは名ばかりで、、実際に受託するのは警察 OB が関わる法人ばかりになる可能性も高い。警察庁では民間委託の導入により、交通担当警察官 500 人の人員合理化が可能と説明しているが、その実、自分たちの天下り先を確保しようという思惑が見て取れるのだ。

天下り先の確保が目的

警察官の天下り先はこれだけではない。「今回の道交法改正で新たに創設される「中型免許」 (5t 以上 11t 未満の車両が運転可能 ) にも、天下りの思惑が入り交じる。現在は公認教習所の教官を務める警察 OB が言う。
「公認の自動車教習所は昔から警察の大切な天下り先です。しかし少子化のあおりを受けて、どの教習所も生徒集めに苦労している。そこで新たに中型免許を創設し、受講生を集めて食いつなごうという魂胆がうかがえます」 ` 民間委託は天下り先の確保が目的ではないか。本誌が警察庁に疑問をぶつけたが、「法案審議の対応に忙しく、取材には応じられない」 ( 広報室 )
との回答だった。代わって、前出の警察OBがこう言う。
「取り締まりの民間委託は、法案成立から 2 年後に施行される予定です。今国会で成立・すれば、鴨年からの施行となります。ちょうど団塊世代の . 退職に間に合う計算です」

駐車違反の違反金は各都道府県に納められる。都道府県はそのカネで取り締まり法人を雇う。つまりドライバーは、自らが泣く泣く納めた違反金によって、さらに厳しい取り締まりにさらされるという事態に直面するのだ。
.今回の改正がもたらすものはこれだけに留まらない。
「実はもっと重要な問題が隠れているんです。天下り問題ばかりに目を奪われては、事の本質を見逃します」

こう話すのは、日弁連で道交法改正に対する意見書を中心になってまとめた岩村智文弁護士だ。 .
「今回の道交法改正は、すでに国会で成立している警察法改正とリンクしています。駐車違反の取り締まりのような、いわば枝葉のことは外部に任せ、警察は公安や警備部門の強化、さらには国外での活動にも進出しようと機会をうかがっています。新しい警察法では、人権や個人の自由よりも国益を優先しようという意図も読みとれます。私は今回の民間委託が、日本が警察国家に生まれ変わる第一歩になるのではないかと、危惧しています」

道路交通法の改正。その背後には国家の深遠な意図が隠されている。